Release 2018.12.16

100円LEDライトを改造する

100円ショップに行くと、色んなタイプのLEDライトがあります。そんな中、USBから給電するタイプもあって、ちょっと手元を照らしたい時に便利かなと思って手を伸ばしてみました。

フレキシブルアーム&ON/OFFスイッチ付きなので、使い勝手が良さそうなんですけど、一点問題があって、所有するモバイルバッテリーに使えないんです。挿してちょっとは点灯するんですけど、すぐ消えてしまいます。

というわけで、この「100円LEDライト&モバイルバッテリー」の組み合わせでも使えるようにできないかの模索について書いてみました。ただし、「こうすれば安全・確実」を謳うものではありませんので、例によって自己責任という事を念頭に置いてからどうぞ。

モバイルバッテリーの最低消費電力

「すぐ消えてしまう」現象の意味が最初分からなかったんですが、どうやら消費電力が“低過ぎ”て、バッテリーの方が「使用してない」と判断し、電気供給をOFFにしてしまうようです。よくよく考えると、確かにArduino単体だけをモバイルバッテリーに挿しても直ぐに止まってしまいます。これもArduinoの消費電力が低いことが原因です(ただし、バッテリーの種類によっては、上手く連続使用出来る場合もあったりします)。

そもそも、電力節約・安全面の視点からこういう機構・仕様になっているので、バッテリー製品としては安心出来る事だとは思いますが、それが今回みたいな話だと仇になってしまってるわけです。調べてみたら、メーカー別で最低動作電力を探っている方がいたり、こういった機能を緩める事で商品の売りにしている製品もあるみたいです。

電源OFFを回避する方法

という事で、問題は“電力が低い”ことなので、たくさん電気を消費すれば、勝手に電源が切れることを回避出来ます。手っ取り早く思いつく方法は、「複数使う」事になります。

ライトをセットで使う

そもそも100円で入手できる程度のモノなので、何個か買ってまとめて使い、消費電力を稼ぎます。

この時、“1つのUSBポート”で消費する事が大事です。自分のバッテリーの場合、2ポートあるんですが、それぞれ別回路の設計らしく、“トータル”の消費量では判断してくませんでした。どちらかのポートが基準量の消費をしている必要があるようです。

USBハブ的なモノは100円ショップで入手できます。

でも、複数使うと“明る過ぎ”っていう問題が出てきます。

まあ、布なり、紙なりで物理的に“遮光”すれば解決出来るんですけど、密閉すると熱が籠もり、今度はLEDの熱暴走という可能性もあるので(こっちの方が危険)、十分注意する必要が出てきます。

デバイスを併充電

複数付けるのが煩わしいなら、単純に何かを充電しながらライトを使えば、自動OFFを回避できます。充電デバイス側ポートで“使用中”になるため、別ポートのLEDライトも点灯し続けます。

充電が必要なUSBデバイスさえあれば成立するので、こっちの方が明快です。

最初「切れちゃう」症状を知る前に、夜の屋外で使用しようと持っていったんですが、その時はこれでしのいだ過去があります。

LEDライトを改造する

さて、ここからが本題です。上述の方法で誤魔化すんじゃなくて、「フツーに使えないのかね」と。電子工作をやるようになった事で、何とか改造出来そうそうな気がしたので、試行錯誤してみることにしました。

100円ライトの消費

まず、実際の消費電力がどれくらいなのか。USBチェッカーを挟んで見てみると、40mAと出ました。

ただし、この状態だと自動OFFになりません。おそらく、USBチェッカー自体の消費分が加味されて、“使用中”と判断されているのかなと思います。

正確な電流量を調べるために、わざわざ「接点を引っ張り出して普通のテスターで見る」のは面倒そうだったので止めましたが、「40mA程度の消費があれば“使用中”に出来る」という目星はつきました。

100円ライトの中身

次に、中身を開けて、どんな構造になっているか見てみました。

開けてみると、かなり単純な構成です。

基板の裏

+が1つの抵抗を挟んで2個のLEDに“並列”で繋がっていて、オルタネイトスイッチを通ってGNDに落ちているようです。USB端子の方までは確認していないですが、おそらくUSBコネクタのVbusとGNDに直結しているのかなと思います(D+-をどう処理しているかは不明)。

回路的にはこんな感じでしょうか。

抵抗で浪費する

最小限の加工で、目的を達成させるにはどうしたらいいか考えて、まず浮かんだのはこの方法です。並列で抵抗を繋げておき、無駄に電気を流せば、“使用中”になるんじゃないかと。

ちゃんと勉強している人は絶対やらない事でしょうが(笑)、目的に適うという点で、とりあえず試してみます。

ここで、有名なオームの法則が必要になります。

V(E) = R I

Vは電圧(ボルテージ – Voltage)、Rは抵抗(レジスタンス – Resistance)、Iは電流(カレント- Intecity of Current)。自分はブ・リと覚えてます。

この式を使って、40mAの電流を流すために必要な抵抗値を探ります。等式を変形させ、

V / I = R

分かっている値を代入(USB 5Vで0.04A流す)。

R = 5 / 0.04

つまり、125Ωの抵抗を挟めば、40mA電気が流れ、“使用中”になり続けるという算段です…ですが、どうも思い通りになりませんでした。

色々な抵抗値で試してみて、結果、100mA程度なら確実に動作することは分かりました。ただし、この抵抗は1/4W(0.25W)が定格なので、5V×0.1A=0.5Wで使用するのはアウトになります。

というか、そもそもこのやり方自体、“真冬に窓全開で暖房を焚いている”ようなもので、究極の浪費だし、結局は“漏電”と同等だと思うので怖いです。試してはみたものの、止めました。

LEDを追加する

そうなると、他に考えられるのはLEDの消費電力を上げる方法になります。元々付いている構成を変えるのは面倒そうなので、新たに消費の大きそうなLEDを追加する事にしました。

小型で光量が大きい「パワーLED」なるものがあります。

通常、電子工作で使っているものはせいぜい10~20mAとかですが、パワーLEDタイプになると何百mAも流せたりします。ただし、大電流を流すと、発熱で暴走する事が問題で、ネット上を調べると、放熱処理に苦闘している記事や動画は山ほど見つかります。

自分の目的は、モバイルバッテリーが“使用中”と思ってくれる最低限の電力が出ればいいので、「1W対応のものを1Wで使わなくてもいいかな」という前提で進めました。回路図的には以下の通りです。

Arduinoを使い始めてから、正直、「LEDは330Ω挿しとけば問題ない」程度のモノしか扱ってこなかったので、それなりに勉強しないといけませんでした(苦)。マルツ電波さんの「LEDの使い方」がとても参考になります。こちらで勉強したほうが確実なので、細かい事は割愛します。

ただ、勉強してみたら、実は今回の製品自体が回路的にアカンのではないかなぁと…1つの抵抗にLED並列って。

まあ、とにかく、LEDに流したい電気を算出するためには、電源の電圧(V)から順電圧(Vf)を引いた電圧でオームの法則に当てはめないといけません。

(V – Vf) / I = R

今回入手したのは、1WパワーLED THEM-CLWXという製品です。データシートを見ると、VF=3.2V / IF=350mAとなっています。結構な電流が流せる仕様ですが、目的の値としては40mA程度でいいので、

(5 – 3.2) / 0.04 = 45Ω

とりあえず、手元にある47Ωを使ってみると、ちゃんとバッテリーが“使用中”として動作してくれるようになりました。USBチェッカーで確認すると70~80mA。手を加える前の状態で40mAだったので、だいたい計算通りです。

という事で、このまま組み込んでみる事にしました。穴をあけ、抵抗と配線を仕込み、基板に結線していきます。

製品のシルバーフレーム部分は金属で通電するっぽいので、ユニバーサル基板を切り抜いてショートしないよう切り離した状態で設置します。

という感じで、1本でもモバイルバッテリーで消えないLEDライトに改造出来ました。

右が改造したLEDライト

光量が大分増えて、使い勝手的にもよくなった気がします。ただ、しばらく点けていると、ほんのり温かくなってくるので、使用するときは気を配ってないといけません。

その他のLEDライト

と、いろいろ試行錯誤してきたんですが、実はその間にUSBバッテリーで普通に扱えるような100円商品が出てきてしまったようで、最終的に右往左往させられただけになってしまいました(笑)。でも、まあ、勉強になったので、全くの無駄ではないかな、と。

一応、見つけたその他の100円商品も取り上げておきます。

6LED USB フレキシブルライト

同じフレキシブルアーム型で、放熱用の金属板もついています。ただし、ON/OFFスイッチは無く、アームも少し短めです。

USBチェッカーで確認すると、80mA流れてました。モバイルバッテリーで普通に連続使用可能でしたが、興味深い注意書きが書いてあります。

1.5A以上の出力を持つUSBポートでの長時間のご使用はお避け下さい。特に、一時的に電圧の上がる自動車では絶対に使用しないでください。本製品が高熱になりすぎたり、つなげた機器の破損に繋がる恐れがあります。

LEDの熱暴走に対する注意って事ですね。パワーLEDは熱を帯びると順電圧が変わり、より電気が流れる。そうすると、更に熱くなっていく…という連鎖が起きて危険という話です。点けていると放熱板が熱を帯びてくるので、よく分かります。注意が必要です。

あと、自動車のシガーソケットって意外に不安定だったと知り、勉強になりました。なるほどなぁ、と。

USB LED電球

こちらはプラスチックで電球を模したデザインになっていて、フックで引っ掛けられるのが便利です。

最大2.5Wと書かれていて、他に比べて明るいです。USBチェッカーの確認では370mAも流れてました。

こちらは熱暴走に関する注意書きは無いんですが、しばらく点けていると、暖かくなり、電流量も増えたので、同様に熱に注意が必要かと思います。

 

100円ショップの商品は日々移り変わっていきますが、今回試してみて、設計としても、コストとしても根本的に「消耗品」なんだなと実感しました(同時に“商品”として成立させる企業努力も凄いなとも思います)。ただ、製品である以上、説明書から外れた使い方をしなければ事故に直結することは無いとは思いますが、扱いには注意を払った方がいいかと思います。

それにしても、LEDの回路を作ることに色気づいてしまったので、他にもやってみたい事が増えてしまい困ります。

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