Release 2018.6.9

SDカードの見かた

Nintendo Switch用のmicroSDを増量交換した事の記事に付随して、SDカードについてチョロっと書こうと思っていたんですが、調べていたら結構ボリュームが大きくなってしまったので、独立記事としてまとめました。

ゲーム機だけじゃなく、SDカード購入時全般の参考にしていただければ。

SDカード

SDカードとは、フラッシュメモリを利用した外部記憶装置の規格で、パナソニック、サンディスク(現・ウエスタン・デジタル)、東芝による共同開発規格として1999年に発表されました。ちなみにSDは「Secure Digital」の略らしいです。

当時は、メモリースティック、コンパクトフラッシュ、スマートメディア等、競合規格が乱立していて、製品別で使い分けないといけなかったり、かなり勝手の悪いものでした。それが次第に淘汰され、今日では消費者に優しい時代となりました。

いずれにせよ、上記の競合メディアや、USBメモリ・SSD等も根本の原理は同じ「フラッシュメモリ」なんですが、仕組みの詳細、形状、転送ルールなどによって「SDカード」という種類になっているわけです。

まず、「SDカード」には3つのサイズ違いがあります。ただ、形状が小くても同じ「SDカード」なので、「アダプタ」を使えば、別サイズにも対応できます。

 SDカード  miniSDカード  microSDカード

miniSDカードは完全にmicroSDに取って代わられ、市場で見なくなりました。周辺の電子機器で扱うのは、ほぼ標準サイズの「SDカード」か、「microSDカード」。ひょっとしたら製品のコンパクト性を追求してく中で、最終的にはmicroSDへ淘汰されていくのかもしれません…。

で、これに加えて、時代に合わせ大容量・高速転送に対応した「後継規格」が追加されてきました。基本的に「互換」があるので、新しい機器なら「古いSDカードも対応出来る」利点があるんですけど、ここがSDカードで混乱する所でもあります。出た時は「ハイスピード」だったのが、次第に「ハイ」ではなくなって、「EX」とか「スーパー」とか「ウルトラ」とか後付していくみたいなノリです。だから、後から並べるとどれが上だか分からなくなるという…。

スペックの見方

上述の「形状違い」とは別で、SDカードの性能を示すための表記があります。

SD~

カード容量・後継上位互換規格による振り分け表記です。

  • SD    ~2GBまで(1999年から)
  • SDHC  4GB~32GB以下(2006年から)
  • SDXC  64GB〜2000GBまで(2009年から)

要は、容量が4GB未満なら「SD」、4GB以上32GB以下なら「SDHC」、それを超えるなら(現時点では)「SDXC」。これにサイズ違いがつくと「microSDXCカード 64GB」みたいに細分化されていきます。

 

左からSDカード(2GB)、SDHCカード(4GB)、SDXCカード(128GB)

ちなみにファイルシステムは、

SD      – FAT 12, 16
SDHC – FAT 32
SDXC  – exFAT

となっています。

スピードクラス

SDカードの普及に伴い各メーカーが作り始めたので、SDHC規格以降、各製品の性能差を“分かりやすく”するために「クラス」というものが表記されるようになりました。要は「この程度の速度であれば書き込み・読み出しが出来ます」っていう“最低転送速度の保証”表記です。カードの表面に印字してあります。

現状、3種類の表記がありますが、いずれも「転送速度」の目安を指し示すものです。そして、各“クラス表記”は、「挿し込む機器側が対応している」場合の話なので注意が必要です。

SDスピードクラス(Class)

SDHC以降、表記されるようになった最低限速度保証を示すものです。

もはや「2GBのSDカード」なんて入手しづらい位なので、現状で購入する機器なら“SDスピードクラス”は問題なく対応しているかと思います。

このクラス表記は下記の4種類があります。

  • Class 2(2MB/s)
  • Class 4(4MB/s)
  • Class 6(6MB/s)
  • Class 10(10MB/s)

英語で“CLASS”、或いは“C”の形の中に数字で表記されています。例えば、下記のようなカードなら「1秒間で最低“4MB”の読み書きが出来ます」ということになります(4 MegaByte per second)。

この場合、“Class4”で4MB/sとなる

UHSスピードクラス

後発でハードウェア部分の拡張規格「UHS(Ultra High Speed)バス」というものが追加されました。その“インターフェース”別の対応と、付随して保証される最低速度の表記です。

ローマ数字表記、或いは有無によって対応“バスインターフェース”の違いが分かります。

バス
インターフェース
カードタイプ 最高バススピード Version ピン配列
 ノーマルスピード SD, SDHC
およびSDXC
12.5MB/s  1.01  1列
 ハイスピード 25MB/s  2.0
 UHS – Ⅰ SDHC及びSDXC 50MB/s (SDR50, DDR50)
104MB/s (SDR104)
 3.01
 UHS – Ⅱ SDHC及びSDXC 156MB/s Full Duplex
312MB/s Half Duplex
 4.0  2列
 UHS – Ⅲ 312MB/s Full Duplex
624MB/s Full Duplex
 6.0

ノーマルスピード~UHS-Ⅰまでは従来のピン配置と同じです。

左からSD、miniSD、microSDの標準ピン(ノーマル~UHS-Ⅰ)

対して、Ⅱ・Ⅲではピン接点が追加されていて、それによってより高速転送が出来るようです。しかも、1列目が従来ピンと互換があるので、UHS-Ⅱ・Ⅲに対応していない機器でも、とりあえず読み・書きだけは出来る互換性を持っています。

実機がないのでイメージ図。左SDXC UHS-Ⅱ・Ⅲ、右microSDXC UHS-Ⅱ・Ⅲ。

そして、UHS用ローマ数字と一緒に、“U”の中に数字が記されているものがあります。これが、実際の最低転送速度です。

10MB/s
30MB/s

この場合、UHS-Ⅰ対応で最低転送速度は10MB/s。ちなみに、同様に「SDスピードクラス」で“Class10”と、UHS-Ⅰ非対応の機器でも10MB/s保証されているのが分かる。

ビデオスピードクラス

「SDクラススピード」表記と一緒で“最低限”の目安なんですが、来たるべき“ウルトラ”とか“スーパー”な「高精細映像用」として新たに表記されるようになったようです。アルファベットの“V”と数字で表記されています。

現状ではV6~V90まであるようですが、数字はそのままMB/sに当てはまります。V6なら“6MB/s”といった感じ。

最大転送速度

上記までの「スピードクラス」は“最低限”を保証する話なので、実際の運用でどれだけ機能するかは、メーカーや型番で変わってきます。なので、別箇に“最高”速度も教えてくれている場合があります。

「microSDカードのスペック比較」Amazon.co.jpより引用

ただし、これら“最大速度”は「理論値」の場合があるので、表記通りに行かない状況もあります。例えるなら、180km/hまでメーターがある車でも、実際の道路でそこまで出さないのと一緒。あくまで“最大”速度です。きっかけになったNintendo Switch用のmicroSDカード比較でも、同じ“最大速度”ながら結果が違いました。

また、“読み出し”の速度なのか、“書き込み”の速度なのか、ハッキリしていない場合が多いので、用途に合わせてしっかり調べる必要があります。例えば、Nintendo Switchで使う場合、主に「ソフトの読み出し」に使われるので、“書き込み”が速くても恐らく役に立ちません。逆に映像録画用なら「動画の書き込み」に使うので、“読み出し”が速くても録画にコマ落ちが出る危険があります。

例えば、下記の商品が気になるなら、

型番っぽい「TS64GUSDU1PE」で検索し、メーカーの製品ページを探します。そこに書かれている情報を参考にするのが確実です。又は、Amazonのレビューだと、実際の速度テストされている方がいるので、そういった情報も役立ちます。

SDカード選びのヒント

以下、他の考慮点です。あくまでも参考程度にどうぞ。

MBとMb

デジタル全般の話なので、分かっている人には他愛ない話なんですが、知らない方のために一応書いておきます。

MB/s(MBps – 1秒あたりのメガバイト)と、Mb/s(Mbps – 1秒当たりのメガビット)では単位が違うので、そのまま比較すると勘違いの元になります。例えれば、時計の“60分”と“1時間”の関係です。

2進数である“bit”は8つで、10進数の“Byte”になります。

8bit = 1Byte

そして、慣例的にbit(ビット)の場合は小文字の‘b’、Byte(バイト)の場合は大文字の‘B’で表記するようになっています。この部分に注意してください。

で、単位をそろえる場合、簡単に言えばByteからbitにするなら8を掛け、bitからByteにするなら8で割ります。

ビデオ用

映像機器用SDカードの場合、画質(圧縮コーデック)による「ビットレート」を調べて、それがカバー出来るモノを選ぶ必要があります。動画は常に「連続写真を送り続ける」ものなので、ビットレートを下回る「最低速度」では“コマ落ち”する危険があるからです。

例えば、Sonyのハンディカムで見ると、AVCHDでの最高画質録画PS(60fps)は「28Mbps」とあります。これはビット表記なので、バイト表記にすると、28÷8=3.5MB/s。ということで、Class10なら余裕で対応出来るという事が分かります。

逆に、業務用機器などで、プロ用コーデック“AVID DNxHD220”で録画する場合、220Mbpsで、220÷8=27.5MB/s。ということはUHS-Ⅰ U1程度じゃ危ないってことが分かります。BlackmagicDesignVideoAssistを導入しようとしてる方はご注意を。

基本的に、業務用映像機器などで求められる高い転送用には、UHS-Ⅱ、UHS-Ⅲカードを選ぶほうが無難です(注:UHS-Ⅲはまだ市場に出回ってません)。

ただし値段が大分違います。

写真用

デジタル一眼の場合、その機器の最高品質画像サイズとRAWビット数で目安が出せます。

例えば、NikonのフラッグシップであるD850では、“RAW12ビット/14ビット”の“8256×5504ピクセル(サイズL)”とあります。処理エンジンのスペックとか圧縮とか色々とありますが、それらを無視して単純計算すると、

8256(横)×5504(縦) = 45441024(全ピクセル)
45441024(全ピクセル)×14(bit – ビット) = 636174336(bit – ビット)
636174336(bit – ビット) = 636174.336(Kb – キロビット)
636174.336(Kb – キロビット) = 636.174336(Mb – メガビット)
636.174336 ÷ 8 = 79.521792(MB – メガバイト)

画像1枚当たり約80MBとなり、なるほどXQDカードのようなメディアじゃないと連写は到底追いつかないことが分かります。

ただ、一般的な使用ならJpeg等“圧縮”が前提になると思うので、ここから「何分の1」になります。こんな風に、メーカー・機種ごとに設定が違ってくるとは思いますが、調べて計算すればカード選択時の参考になる、かと。

Nintendo Switch用

Nintendo SwitchのmicroSDカードスロットはUHS-Ⅰ対応のようです。また、読み込み速度 は“60~95MB/s”を奨励しています。

Nintendo Switch サポート – microSDカードについて

つまり、ローマ数字で「Ⅰ」が表記されていて、スペックで「読み込みの“最大速度”」がなるべく高いものを。更に、スピードテストが出ているのならそれを参考に選ぶ方がいいかと思います。

もし、Transcend製が選択肢にあるなら、こちらの記事も参考にどうぞ。

 

本当はSDカードって、いろんな拡張規格が存在しているんですが、そこら辺全て網羅しようとすると完全に混乱するので、まだ一般的でない部分は割愛しました。気になる方はSD Assosiation等でお調べください。

参考リンク

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