Release 2016.8.27 / Update 2017.1.26

(日本語) アルバム 「FAMICOM MUSIC」レビューというか…

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昔から気になっていたCD「FAMICOM MUSIC」を中古で買いました。これは僕が小学生のころに発売されたもので、その再販CDに当たるかと思います。

当時レコードショップでジャケットを見た記憶がありますが、実はこのシリーズのvolume2を持っています…レコードで。小学生でしたけど、当時CDへの過渡期で、唯一にして初めて買ったレコード盤だったと思います。

その音源は気に入っていて今もipodに入れて聞いてるんですが、音に関する知識が増えてから聞き直すと、「かなり凝った作りになってる」と分かります。それで「Volume1はどうなんだろう?」ってずっと気になってて、よくやく今回購入に踏み切りました。

Volume1 を聴く

収録タイトル曲

曲はスーパーマリオブラザーズ全盛の頃を境に、いわゆるファミコンゲーム初期からの印象的なゲームタイトルが収録されています。

  1. スーパーマリオブラザーズ(6:00)
  2. バルーンファイト(2:10)
  3. バルーンファイト(アレンジバージョン)(3:30)
  4. ドンキーコング(2:38)
  5. ベースボールサッカーゴルフテニス(1:30)
  6. レッキングクルー(2:53)
  7. スーパーマリオブラザーズ(アレンジバージョン)(4:21)
  8. ドンキーコングジュニア(3:20)
  9. エキサイトバイク(1:37)
  10. マリオブラザーズ(2:45)
  11. ゼルダの伝説(5:41)

「ゲーム音」のアルバム

Volume2の経験から音楽を聴くためのアルバムだと思っていたんですが、そうではなかったようです。ジャンプ音や打撃音等のSE(効果音)がひっきりなしに入っています。しかも音楽自体はモノラルなのに、SEだけステレオでウザいくらいに左右へパンしています。

曲はゲームやっているかのように、ステージに沿ったかたちで収録されています、SE付きで。

また、曲によってはベタッとしたリバーブ、というかエコーが突発的にかかったり切れたりします。悪戯でエフェクターいじってるみたいな。ゼルダ以外の音楽は完全モノラルなので、エコーが邪魔して聞こえづらかったりします。聴いてて心地よいものではないです。

ほぼSEだけの曲もあります。エキサイトバイクは1分37秒の収録時間で2/3がバイクのSEだけです。まあ、ゲーム自体がそうなんですけど、これを“ファミコンミュージック”として入れてしまう感覚がスゴイです。

nintendo_music_vol1

存在意義の見出せないVolume1

これはゲーム音楽ではなく、ゲーム音を収録したアルバムです。スターウォーズのサウンドトラック買ったら、ライトセイバーの音がずっと鳴ってるみたいな話で。SEって映像に付随して初めて意味が出てくるので、この場合邪魔な気がします。当時はゲーム音楽なんてそんなに評価されてなかったから、こんなことができたんでしょうね。

このアルバムを繰り返し聴こうとは思いません。

それに今だったらもっと忠実に全ての音を収録した音源もあったりするので、アーカイブとしての価値も疑問があります。

結局、このアルバムを評価できるものがあるなら、何十年経った後でも忘れなかったこの雑なジャケットデザインくらいですかね。

nintendo_music_vol1_2

以上。

と、これではあまりにも納得いかないので、これを買うきっかけになったVolume2について書きたいと思います。

Volume2を解説する

収録タイトル曲

Volume1の続きとしているだけあって、時系列になってます。アルバムにはディスクシステムのタイトルがラインナップされています。

  1. 新鬼ヶ島 -前編- イントロ(2:20)
  2. 新鬼ヶ島 -前編- 第一章(1:07)
  3. 新鬼ヶ島 -前編- 第二章 (2:02)
  4. 新鬼ヶ島 -前編- 第三章 (1:16)
  5. 新鬼ヶ島 -前編- 第四章 (1:13)
  6. 新鬼ヶ島 -前編- スタッフロール(2:03)
  7. バレーボール(0:51)
  8. メトロイド(4:05)
  9. ゴルフ JAPANコース(2:49)
  10. パルテナの鏡(4:53)
  11. 夢工場 ドキドキパニック (アレンジ・バージョン)(4:19)
  12. リンクの冒険(3:45)
  13. 謎の村雨城(2:43)
  14. ゴルフ USコース(2:42)
  15. 新鬼ヶ島 -後編- 第五章 (1:59)
  16. 新鬼ヶ島 -後編- 第六章 (2:05)
  17. 新鬼ヶ島 -後編- 第七章 (1:48)
  18. 新鬼ヶ島 -後編- 第八章 (1:12)
  19. 新鬼ヶ島 -後編- 第九章 (2:25)
  20. 新鬼ヶ島 -後編- スタッフロール(1:20)

当時、この「新鬼ヶ島」の音楽が好きで、そのタイトルに惹かれたのと、「パルテナの鏡」、「メトロイド」の音楽も好きだったので、ならばと当時購入に踏み切ったんだと思います。

でも、最初は失敗したと思ってました。何故ならこれもメドレー形式で、じっくり一つ一つを聴くような構成ではないんですよね。ゲーム中はずっと繰り返し聴いてたので、「もうちょっと」ってところで終わってしまうのが当時、不満だったんです。

LP_photo_03

8bit音楽ではありえない贅沢なアルバム

ですが、DTMとかやり出して、レコーディングぽいことなんかも経験してから改めてこのアルバム聴いたらビックリします。当時は分からなかったんですが、これ全部ステレオなんです。ファミコン自体はモノラルだけど、そのファミコンの音色がちゃんとステレオになって収録されています。

Volume1もSEはそうでしたけど、メインの音楽自体は基本モノラルでした。SEはズレて鳴っても関係ないので、単純に別録りできたんだと思います。でも、このVolume2はちゃんと音色パートごとに定位が振り分けられています。かといってエフェクト加工したようなステレオではないです。音色が完全にLRに振り分けられる時があったり、リバーブのかかり具合が個別に調整されてます。素材をパラって収録(1パートごとに別チャンネルへ分けて録音)してないと、こういう処理はできません。

しかも、中には1つの曲としてガッチリリミックスされたかような構成の曲もあります(単純にフェードだけの曲も多いですが)。このアルバムは80年代制作です。当時既に普及してたのか調べてないですけど、もしDAWが使えたとしても相当高級品です。通常ならテープ編集しないといけません。ファミコン専用のシーケンサーがあったのかとか、同期が取れたのかとか、当時のレコーディング環境が気になります。

ただそれでもテープのマルチトラックレコーダで収録しているアルバムであることは間違いないと思います。リバーブの質感からしてちゃんとした機材を使っていると思われるので、それなりの環境(スタジオ)とスタッフで手間をかけないとこういう形にはなりません。

ゲーム音を音楽として聴くコンセプト

子供のときは1曲1曲が短いことやゲームタイトル内に未収録な曲があることに不満でしたが、ゲームの内容も忘れた現在ではそんなことは気になりません。それよりゲーム音楽自体が1つの音楽として成立するように、ちゃんと構成しているのが分かります。

「メトロイド」はタイトルとエンディングだけ、という大分端折った内容です。他にもいい曲がたくさんあるので消化不良感は否めません。でも、ずっと暗い雰囲気の中で最後だけ開放感を出したかったという田中宏和さんの話から、作家の狙いである明暗の対比をコンパクトにまとめているという考え方もできます。エンディングの躍動感はステレオならではの広がりがあって聴いてて気持ちがいいです。

「パルテナの鏡」はタイトル画面の曲からエンディングまでをいいとこ取りで1曲に繋げています。でも目まぐるしく展開する映画音楽のようにテンポよく1曲にまとめているので、知らない人が聴いたら違和感を感じないと思います。そのまとまりとステレオ感は、このアルバムでなければ聴けません。

余談ですが、高校生のときユニコーンの「ヒゲとボイン」のバンドスコア持ってました。その中にゲーム音楽からコード進行流用したって書いてあったんですけど(ボコーダ部分はドラクエから)、全体の構成はこのパルテナのタイトル音楽からじゃないかなぁと。音楽理論的に解説できるほど勉強してないので投げっぱなしな話ですけど、時間があればヒゲとボインとパルテナも聞き比べてみてください。どっちも名曲です。

このアルバム、全体的にリバーブのかかり具合がいいです。音色を損ねない程度に、それでいて空間的な広がりを持たせているので、メロディを聴いてて心地よくなります。特に新鬼ヶ島の曲はメロディを聞かせるものが多いので、それがよく活きてます。

そして、(僕の持っている音源がアナログ盤だからかもしれないですが)音自体が8ビット音源とは思えないくらい厚みがあっていいです。結構ミキサー卓で補正しているのかもしれません。

Volume2は異質のゲーム音楽アルバム

昔のゲーム音楽を収録したアルバムって最近こそよく見ますけど、それは実機のモノラル音を「忠実に」ライン収録してまとめたものです。チョロっと録音機材を用意さえすれば誰にでもできるような。だから、それらはお手軽アーカイブなんですよね。でも、まあ、それが普通です。この「FAMICOM MUSIC volume 2」みたいに、実機の音を忠実に整音しているようなアルバムは、他に聴いたことがありません。ずっとこんな形態のゲームサントラ探してたんですけど、同じシリーズでさえ別モンだったわけですし。

考えてみたら、ここまでするなら採譜してプロの生演奏収録したほうが早いですよね。敢えて実機の音源でここまでやるのは相当手間のかかる作り方だったと思います。

単にバブルで予算が潤沢だっただけなのかもしれません。

でも「ピコピコ音」なんて軽くあしらわれて認められていなかったゲーム音楽の「音楽性」に、ちゃんと光を当てようっていうアルバム製作者の意思があったのではないか、と僕は考えています。だから実機の音源を使ってここまでしているんだと。Volume1を聴いて、逆にVolume2のそんなコンセプトを感じました。

そういう意味ではvol1も買って失敗ではなかった…と思いたいです。

機会がある方は、是非なるべくいい再生環境、大音響でこの「ファミコンミュージックvolume2」をじっくり聞いてみてください。ファミコンの「音楽」を楽しめると思います。

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